自由研究は終わらない

個性とわかりにくさの境界線をさまよい歩くブログ。

「いらすとや」の挿絵だけでハードボイルド小説書いてみた

 

そうだな。絶対にありえないと思うが、もし俺が家庭を持ったら家訓としてこう伝えておこう「夜の波止場で女性の悲鳴を聞いたら、声の方に近づいてはいけない」ってな。なぜかって?今の俺みたいなことになるからだよ。

助けも来ない場所で凶悪な顔した男4人に囲まれるような状況にな。

 

 

 

「ニイちゃん。えらいもん見ちまったなぁ?だが運がいい。この時期だ、冬の海よりゃマシだろうよ」

3人の中で最も巨体の、まるでゴリラがスーツを着たかのような男が皮肉な笑みを浮かべながら言った。

 

f:id:kenichiakiyama:20170517001246p:plain

 

その言葉に周りを取り囲む男たちが体を揺らして笑う。

初夏に差し掛かった季節特有のなまぬるい潮風が、下品な嘲笑と混ざっていった。

 

 

 

ストン。と俺は肩を落とした。

男たちはおれが命への執着を捨てたのだと思ったらしく、下卑た笑い声を暗闇に響かせる。

 

「最後に一つだけ聞きたいんだが」

俺は俯いたまま声だけで男たちに問う。

「そこで横になってる女は、お前らがやったのか?」

 

指先で暗がりの向こうを指し示す。そこには意識を失い、横たわっている女性がいた。何があったのか、ここから見える肌の色はもう黒ずんでいると言っていいど変色していた。

 

f:id:kenichiakiyama:20170517001828p:plain

 

 

「だとしたらなんだ?海水浴の前に準備体操でもするか?」

ゴリラ顔がサングラス越しでもわかるほどの見下した目を俺に飛ばす。

 

こういう時、いつも頭に浮かぶイメージがある。

子供の頃に憧れた、誰でも知っているあのヒーロー。

必殺技を何回も練習した。あの漫画。

そういえばあの主人公も、怒りで変身したんだったな。。

 

 

「なんでもないんだ。ただな」

ゆっくりと息を吸いこんだ。

「女の子には優しくしろって、じっちゃんに教わったもんでな」

口から言葉が出た瞬間、それまで溜めていた怒りが全身を駆け巡った。

 

 

f:id:kenichiakiyama:20170517001852p:plain

 

 

男たちはたじろぎつつもすぐに臨戦態勢に入る。

「ああ?やんのかコラア!!」

テンプレートから貼り付けたようなお決まりのセリフとともに、1人の男が右腕を振り上げた。

 

 

f:id:kenichiakiyama:20170517002008p:plain

 

瞬間。男の体は宙に浮かび、コンクリートに叩きつけられた。

つづいてもう1人の男が俺の左肩をつかみ、体を引き寄せつつ拳を回した。指で何かが光っている。よく見えないが、間違いなくメリケンサックだろう。

 

当然のように男の拳は空を切る。そして、これもまた当然のようにその男は俺に投げとばされた。

残るはゴリラ顔だけだ。こいつは少しだけ骨が折れるかもしれない。

ゴリラ顔も俺と同じように考えたらしく、2人でのにらみ合いが続く。

 

 

 

「待って!その男を殺しちゃだめ!」

俺とゴリラ顔との間に押し入ったのは、殺伐とした場にそぐわない艶のある声だった。

 

ゴリラ顔が目をこちらに向けたまま怒鳴る。

「アケミ、なんで来やがった!」

 

 

f:id:kenichiakiyama:20170517001919p:plain

「あんたには関係ないだろ。それよりさ……」

アケミと呼ばれた女は、にこやかに微笑んでこう切り出した。

「あんた、この街を救ってくれないかい……?」

 

俺の家訓に追加だ「ゴリラ顔には近づくな」ってな。

 

 

 

——続かない——

スポンサードリンク